年が明けて2か月が経ちますが、昨年の2歳リーディングについて触れたいと思います。

 通常種牡馬リーディングとは「獲得賞金順」に順位がつけられます。この2歳世代はディープインパクト産駒が重賞4勝、ハーツクライ産駒が同3勝となりましたのでこれら2種牡馬は必然的に上位に来ます。アーニングインデックスも高くなっています。ハーツクライ産駒が2歳戦から始動して勝ち星を重ねるというのは2019年からの目立った傾向です。上位種牡馬の中で出走頭数も59頭と少ない中、堂々として威張れる順位です。おそらくノーザンファームのハーツクライ産駒に対する育成方針が変わったものと思われます。

 通常育成の方針は成長の伸びしろを考慮して決められるものです。2歳で仕上げてしまったらその後の成長が止まる馬もいます。逆にダイワメジャー産駒に象徴されるように、「早期に仕上げやすい」種牡馬の産駒もいます。おしなべて体格が牡馬では500㎏前後と大型な馬が多いですね。早くに成長のピークが来るので強い調教を科すことができる。そんなイメージでしょうか。

 

【2019年2歳リーディング(賞金順)】

順位 種牡馬名 出走頭数 勝馬頭数 出走回数 勝利回数 賞金 勝率 E-I
1 ディープインパクト 99 46 183 52 703,360 46.5% 2.70
2 ハーツクライ 59 14 156 22 472,095 23.7% 3.04
3 キズナ 123 27 323 33 464,008 22.0% 1.44
4 ダイワメジャー 69 17 196 22 390,826 24.6% 2.15
5 エピファネイア 98 30 243 31 334,546 30.6% 1.30
6 ロードカナロア 93 20 213 24 301,545 21.5% 1.23
7 ヘニーヒューズ 70 18 172 23 246,464 25.7% 1.34
8 キンシャサノキセキ 65 19 181 19 248,876 29.2% 1.42
9 オルフェーヴル 96 17 200 20 235,131 17.7% 0.93
10 スクリーンヒーロー 59 14 153 16 226,524 23.7% 1.46
11 ルーラーシップ 96 12 225 12 200,412 12.5% 0.79
12 キングカメハメハ 57 14 103 17 189,128 24.6% 1.26
13 ジャスタウェイ 66 13 177 15 185,964 19.7% 1.07
14 タートルボウル 36 8 111 9 172,062 22.2% 1.82
15 リアルインパクト 59 9 144 11 164,848 15.3% 1.06
16 クロフネ 53 12 138 13 158,431 22.6% 1.14
17 ヴィクトワールピサ 63 16 173 16 157,600 25.4% 0.95
18 ゴールドシップ 52 9 138 10 150,368 17.3% 1.10
19 パイロ 55 12 145 12 132,850 21.8% 0.92
20 ゴールドアリュール 44 11 91 12 132,667 25.0% 1.15

 

 新種牡馬に目を移すとキズナ・エピファネイアとも及第点と言えるでしょう。種付け頭数(産駒数)が多い(キズナ:269頭、エピファネイア:221頭)ので、多少この順位は「下駄をはいた」状態であることは後述したいと思います。新種牡馬は初年度に10勝挙げれば成功だ…と言われた時期もありますので、その点は評価してもいいと思います。

 そしてここで注目すべきはロードカナロア産駒。過去2年(2017年/2018年)は両年ともディープインパクトに次ぐリーディング2位でした。しかしながら今年の2歳リーディングでは6位。この世代では大ブレーキがかかっていることになります。この世代も269頭に種付けされており、極端に産駒数が減ったわけではありません。ただこの世代にはアーモンドアイ・サートゥルナーリア・ステルヴィオ・ダノンスマッシュ級の重賞勝ち馬はおらず、なおかつ全体的な順位も下げているという事になります。2020年のロードカナロアの種付け料は2000万円に大幅アップとなり、日本最高額になりました。その事実がある中での今回の大ブレーキ。少々未来が心配になります。


 ここまでは獲得賞金・勝利数をベースに全体の流れを見てきましたが、少し違った観点からリーディングを見てみたいと思います。

 新種牡馬が加わるとどうしてもかなりの頭数種付けが行われます。今年はキズナとエピファネイアで合わせて490頭に種付けを行ったので、その分「割を食う=種付け頭数を減らされる」種牡馬も出てきます。

 通常リーディングは賞金順に並べられるものですが、以下の表はリーディング20位以内を「勝率順」に並べ替えたものです。まずはご覧ください。

 

【2019年2歳リーディング(勝率順)】

順位 種牡馬名 出走頭数 勝馬頭数 出走回数 勝利回数 賞金 勝率 E-I
1 ディープインパクト 99 46 183 52 703,360 46.5% 2.70
2 エピファネイア 98 30 243 31 334,546 30.6% 1.30
3 キンシャサノキセキ 65 19 181 19 248,876 29.2% 1.42
4 ヘニーヒューズ 70 18 172 23 246,464 25.7% 1.34
5 ヴィクトワールピサ 63 16 173 16 157,600 25.4% 0.95
6 ゴールドアリュール 44 11 91 12 132,667 25.0% 1.15
7 ダイワメジャー 69 17 196 22 390,826 24.6% 2.15
8 キングカメハメハ 57 14 103 17 189,128 24.6% 1.26
9 ハーツクライ 59 14 156 22 472,095 23.7% 3.04
10 スクリーンヒーロー 59 14 153 16 226,524 23.7% 1.46
11 クロフネ 53 12 138 13 158,431 22.6% 1.14
12 タートルボウル 36 8 111 9 172,062 22.2% 1.82
13 キズナ 123 27 323 33 464,008 22.0% 1.44
14 パイロ 55 12 145 12 132,850 21.8% 0.92
15 ロードカナロア 93 20 213 24 301,545 21.5% 1.23
16 ジャスタウェイ 66 13 177 15 185,964 19.7% 1.07
17 オルフェーヴル 96 17 200 20 235,131 17.7% 0.93
18 ゴールドシップ 52 9 138 10 150,368 17.3% 1.10
19 リアルインパクト 59 9 144 11 164,848 15.3% 1.06
20 ルーラーシップ 96 12 225 12 200,412 12.5% 0.79

 まず上位に来た新種牡馬エピファネイアは勝率で優秀なのは明白です。

 つぎに上位に来ているキンシャサノキセキやヘニーヒューズなど、芝でも活躍馬を出すがダートが主戦場…といった2頭です。これはダートの新馬戦・未勝利戦で両種牡馬がどれだけ強いかを明確に表していると思います。この事実を踏まえて馬券を組み立てるのもありですね。とにかく勢いのあるヘニーヒューズとキンシャサノキセキは覚えておいたほうが良さそうです。

 またマイナス評価せざるを得ないのはキズナ。獲得賞金では3位にランキングされましたが、それはそもそもの産駒数が多いからです。同じ新種牡馬でもエピファネイアとは違います。勝率ベースに直すと13位まで転落してしまいます。多頭数出走させて勝率が悪いがトータルでなんとか成績を上乗せ…そんなイメージだと思います。初年度は多くの繁殖牝馬を集めてなんとか順位をキープしていますが、種付け頭数が減ってくるとみるみる順位を下げてくるかもしれません。「2016年:269頭、2017年:212頭、2018年:152頭」。ディープインパクトの後継種牡馬として期待を背負っているだけに、ここからの巻き返しを期待したいです。ちまたで言われているほど成功していないのがキズナの現状と言ったところでしょうか。

 


 

以下、参考までに2歳重賞の勝馬とその種牡馬を挙げておきます。

レース名 勝馬 種牡馬
函館2歳S ビアンフェ キズナ
新潟2歳S ウーマンズハート ハーツクライ
札幌2歳S ブラックホール ゴールドシップ
小倉2歳S マイネルグリッド スクリーンヒーロー
サウジアラビアRC サリオス ハーツクライ
アルテミスS リアアメリア ディープインパクト
ファンタジーS レシステンシア ダイワメジャー
京王杯2歳S タイセイビジョン タートルボウル
デイリー杯2歳S レッドヴェルジュール ディープインパクト
東京スポーツ杯2歳S コントレイル ディープインパクト
京都2歳S マイラプソディ ハーツクライ
阪神JF レシステンシア ダイワメジャー
朝日FS サリオス ハーツクライ
ホープフルS コントレイル ディープインパクト

ディープインパクト(4勝)、ハーツクライ(3勝)、ダイワメジャー(2勝)

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