長年サイア―ランキングの1位(2010~2011年)・2位(2012年~2018年)を守り続けてきたキングカメハメハ。その特徴と、後継種牡馬の傾向について考えたいと思います。
①種牡馬キングカメハメハについて
②意外に顕著に!牡馬産駒・牝馬産駒
③ポスト・キンカメについて
①種牡馬キングカメハメハについて
まずはキングカメハメハの血統表
Kingmambo (米) 1990 鹿毛 Mr. Prospector系 |
Mr. Prospector 1970 鹿毛 |
Raise a Native 1961 栗毛 |
Native Dancer 1950 芦毛 |
Polynesian |
Geisha | ||||
Raise You 1946 栗毛 |
Case Ace | |||
Lady Glory | ||||
Gold Digger 1962 鹿毛 |
Nashua 1952 鹿毛 |
Nasrullah | ||
Segula | ||||
Sequence 1946 鹿毛 |
Count Fleet | |||
Miss Dogwood | ||||
Miesque 1984 鹿毛 |
Nureyev 1977 鹿毛 |
Northern Dancer 1961 鹿毛 |
Nearctic | |
Natalma | ||||
Special 1969 鹿毛 |
Forli | |||
Thong | ||||
Pasadoble 1979 鹿毛 |
Prove Out 1969 栗毛 |
Graustark | ||
Equal Venture | ||||
Santa Quilla 1970 黒鹿毛 |
Sanctus | |||
Neriad | ||||
マンファス Manfath(愛) 1991 黒鹿毛 FNo.[22-d] |
ラストタイクーン Last Tycoon(愛) 1983 黒鹿毛 |
トライマイベスト Try My Best(米) 1975 鹿毛 |
Northern Dancer 1961 鹿毛 |
Nearctic |
Natalma | ||||
Sex Appeal 1970 栗毛 |
Buckpasser | |||
Best in Show | ||||
Mill Princess 1977 鹿毛 |
Mill Reef 1968 鹿毛 |
Never Bend | ||
Milan Mill | ||||
Irish Lass 1962 鹿毛 |
Sayajirao | |||
Scollata | ||||
Pilot Bird 1983 鹿毛 |
Blakeney 1966 鹿毛 |
Hethersett 1959 鹿毛 |
Hugh Lupus | |
Bride Elect | ||||
Windmill Girl 1961 鹿毛 |
Hornbeam | |||
Chorus Beauty | ||||
The Dancer 1977 鹿毛 |
Green Dancer 1972 鹿毛 |
Nijinsky | ||
Green Valley | ||||
Khazaeen 1968 鹿毛 |
Charlottesville | |||
Aimee |
父Kingmamboは米国生産馬で、フランス調教馬。英国・仏国で5勝を挙げました。仏2000ギニー(芝1600m)、St.ジェームスパレスS(芝1800m)、ムーンランドロンシャン賞(芝1600m)など、G1を3勝しています。Kingmamboの母Miesqueは米国産、フランス調教馬で英国・仏国で活躍したのですが、20世紀の欧州トップ10牝馬に入ると言われており、成績も優秀で、繁殖牝馬としても優れた成績を残しました。
母マンファスはアイルランド生産馬。母父には異血Dejebelの流れを組む血が入っており、日本で言うメジロマックイーンの系統です。(3代祖で言うと、パイアリータークの末裔です)。この辺り、欧州血脈の多様性を感じますし、キングカメハメハの活躍の底力になってると思います。
1999年のキーンランドセールにおいて、65万ドルで吉田勝己氏が落札。その時お腹にいた仔がキングカメハメハという事になります。キングカメハメハは2001年セレクトセールにおいて、7800万円で金子真人氏が落札しています。
現役時代は2004年に、すみれS・毎日杯(G3)を連勝したものの、レースに紛れのある中山での皐月賞を嫌い、NHKマイルカップを選択し優勝。その勢いのまま、日本ダービーではダイワメジャーやハーツクライに後塵を拝することなく、2分23秒3という当時では破格の好タイムで優勝しました。秋には神戸新聞杯を圧勝するも、右前浅屈腱炎を発症し、引退を余儀なくされました。
引退後は種牡馬として社台スタリオンステーションに繫用されたのですが、2008年に産駒がデビューした後、2010年~11年には種牡馬リーディングトップに立ちました。2012年~2018年の長期間、ディープインパクトに次ぐ、2位を死守し、種牡馬としての資質の高さを示しました。
キングカメハメハがこれだけ長期間、種牡馬として活躍できた最大のポイントは、自身が距離や適性を主張することなく、母馬の特徴を引き出して能力を伸ばす…と言った「引き出し型種牡馬」である強みがあったのは間違いありません。ロードカナロアのようなスプリンターも輩出しましたし、ローズキングダムやルーラーシップのような長距離対応可能な産駒も生みました。また、ダートでも活躍できる産駒を多数輩出しました。このような特徴は、母の適性を伸ばすという特徴があってこその事だと思います。以下、産駒の距離別、芝・ダ別の成績を記したいと思います。
※集計期間:2008年6月~2022年5月
芝 | 出走 | 勝鞍 | 勝率 | 重賞勝ち数 |
1000m~1200m | 1398 | 127 | 9.1% | 7 |
1400m~1600m | 3257 | 304 | 9.3% | 25 |
1800m~2000m | 4718 | 525 | 11.1% | 49 |
2200m~2400m | 1124 | 121 | 10.8% | 22 |
2500m~3600m | 455 | 40 | 8.8% | 6 |
【G1活躍馬】
1000m~1200m:ロードカナロア、レッツゴードンキ
1400m~1600m:リオンディーズ、レッツゴードンキ、ロードカナロア、アパパネ、ローズキングダム、フィフスペトル、エイシンリターンズ、レディアルバローザ、コスモセンサー、コディーノ、エーシンリターンズ、レディアルバローザ、ミュゼスルタン、ケイアイエレガント、エアスピネル、アットザシーサイド、レッドヴェイロン
1800m~2000m:アパパネ、ドゥラメンテ、ラブリーデイ、レイデオロ、アロマティコ、ルーラーシップ、コディーノ、トゥザワールド、タガノエトワール、マキシマムドパリ、ヤマカツエース、アンドヴァラナウト
2200m~2400m:アパパネ、ドゥラメンテ、ラブリーデイ、レイデオロ、ミッキーロケット、スタニングローズ、アンドヴァラナウト、コズミックフォース、ヤマカツエース、チェッキーノ、ディアデラマドレ、タガノエトワール、アロマティコ、コディーノ、ルーラーシップ、アロマティコ、ペルシャザール
2500m~3600m:ローズキングダム(菊花賞3着)、トゥザグローリー(有馬記念3着)、ルーラーシップ(有馬記念3着)、トゥザワールド(有馬記念3着)
ダート | 出走 | 勝鞍 | 勝率 | 重賞勝ち数 |
1000m~1200m | 1234 | 108 | 8.8% | 0 |
1300m~1600m | 2067 | 174 | 8.4% | 2 |
1700m~1800m | 4669 | 539 | 11.5% | 11 |
1900m~2400m | 538 | 113 | 21.0% | 4 |
【重賞活躍馬】
1300m~1600m:ペルシャザール、アドマイヤロイヤル
1700m~1800m:ロワジャルダン、ホッコータルマエ、グランドシチー、ヒラボクキング、チュウワウィザード
1900m~2400m:ナイスミーチュー、ソリタリーキング、グレイトパール、チュウワウィザード
以上、キングカメハメハの「引き出し型種牡馬」として、多様な適性を示す産駒を輩出していると言えます。
【参考】芝・ダート比較
コース | 出走回数 | 勝利数 | 勝率 | 獲得賞金 |
芝 | 11051 | 1127 | 10.2% | ¥2,729,122- |
ダート | 9037 | 941 | 10.4% | ¥1,799,800- |
②意外に顕著に!牡馬せん馬産駒・牝馬産駒
キングカメハメハ産駒は牡馬/せん馬の活躍が顕著で、比べて牝馬の活躍はそこまでではありません。勝率にも差が出てきますね。また、特に上級条件における牡馬/せん馬と牝馬の成績はかなりの差が出てしまうため、獲得賞金に大きな開きが出ます。
芝全成績
性別 | 出走回数 | 勝利数 | 勝率 | 獲得賞金 |
牡馬/せん馬 | 6939 | 763 | 11.0% | ¥21,600,730,000 |
牝馬 | 4025 | 355 | 8.8% | ¥8,370,150,000 |
ダート全成績
性別 | 出走回数 | 勝利数 | 勝率 | 獲得賞金 |
牡馬/せん馬 | 6025 | 701 | 11.6% | ¥12,905,520,000 |
牝馬 | 2952 | 236 | 8.0% | ¥3,275,630,000 |
やはりキングカメハメハ産駒は「牡馬が強い!」というのは紛れもない事実のようです。特に芝よりもダートで顕著ですね。この話は後々、後継種牡馬を考察する際に、重要な要素になります。
③ポスト・キンカメについて
キングカメハメハの「引き出し型種牡馬」としての活躍を見てきましたが、ポスト・キングカメハメハの有力種牡馬候補は多数います。
現時点で種牡馬となっている産駒を挙げます。
ルーラーシップ、ロードカナロア、ドゥラメンテ、リオンディーズ、トゥザグローリー、トゥザワールド、ラブリーデイ、ヤマカツエース、レイデオロ、ミッキーロケット、ペルシャザール、ホッコータルマエ、タイセイレジェンドと非常に多くの種牡馬を産んでおり、キングカメハメハはいわゆるサイアー・オブ・サイアーである事も分かります。
現在(2022年7月)、キングカメハメハ後継種牡馬は大きく分けて、5通りあると考えています。自信が「引き出し型種牡馬」であるので、牝系別に見れば、その特徴が現れてくるのではないか…と考えています。「エアグルーヴ系」、「レディブラッサム系」、「シーザリオ系」、そしてこれから現れるであろう「ウインドインハーヘア一系」。そして「その他」。
サンプル数が十分足りており、分析できるのは、ルーラーシップ、ドゥラメンテ、ロードカナロアぐらいなのですが、この「引き出し型」を参考に、各種牡馬の特徴を予想する事はできそうです。リオンディーズ、ラブリーデイ、ホッコータルマエあたりはある程度傾向が出てきており、今後デビューしてくる、レイデオロ、孫世代になるのですが、ステルヴィオ、ダノンスマッシュ、サートゥルナーリアあたりの適性も推測する事が可能になってくると思います。
続きはまた次回。