JRAホームページの上記の2歳リーディングサイアーランキングは、集計が12月最終開催時点で終了します。その後のランキングを捕捉していくデータは公表されません。

 しかし、私は2022年の1月以降の3歳の重賞レースを見つつ、この2歳ランキングが少し様相を変えてくるのではないか…と、ざっくりとした予感がありました。そこで考えたのが「世代のサイアーランキング」です。期間を区切って、単一世代の賞金データを集計して行けば、この現3歳世代(2019年産)で種牡馬の勢力図が見えてくるのではないか…という考え方です。

 ただ、単一世代で集計すると、どうしても母集団が小さくなってしまうという点には注意を払わなければなりません。産駒が多い種牡馬では、データが偏ること(賞金も加算されやすい)も予想されます。

菊花賞終了時点のサイアーランキングはコチラ

 本論に入り前に菊花賞以降の活躍馬を見てみましょう。

・イクイノックス(キタサンブラック) 天皇賞秋(優勝)、有馬記念(優勝)

・セリフォス(ダイワメジャー) マイルチャンピオンシップ(優勝)

・ボルドグラーシュ(スクリーンヒーロー) 有馬記念(2着)

・ノットゥルノ(ハーツクライ) 東京大賞典(2着)

・キラーアビリティ(ディープインパクト) 中日新聞杯(優勝)

 

集計期間:2021年6月~2022年12月29日)

※獲得総賞金順

※勝率が10%を超える種牡馬は赤字で表示しています(出走頭数ベースではなく、出走回数ベースです)。

※ダートシェア率が30%を超える種牡馬は黄色で着色。ダートシェアの考え方は、過去のコラムをご参照ください。

※種付け頭数の()数字は2019年産駒の種付け頭数ランキングの順位です。

順位 種牡馬 獲得総賞金 勝率 ダートシェア率 前期間までの順位 種付け頭数
1 ロードカナロア ¥1,713,850,000 12.7% 26.0% 3 294頭(1)
2 ドゥラメンテ ¥1,694,800,000 10.3% 20.1% 2 290頭(2)
3 キタサンブラック ¥1,486290,000 12.5% 26.5% 11 130頭(31)
4 ディープインパクト ¥1,486,240,000 18.9% 6.3% 1 197頭(9)
5 ハーツクライ ¥1,359,200,000 13.8% 29.3% 4 174頭(14)
6 ドレフォン ¥1,344,680,000 11.8% 74.2% 5 207頭(7)
7 キズナ ¥1,152,740,000 10.1% 42.5% 9 152頭(25)
8 ダイワメジャー ¥1,107,160,000 9.7% 36.8% 8 136頭(29)
9 エピフェネイア ¥1,089,350,000 8.8% 13.0% 6 220頭(5)
10 ハービンジャー ¥925,500,000 8.5% 10.0% 7 212頭(6)
11 モーリス ¥895,800,000 8.0% 33.3% 11 245頭(3)
12 キングカメハメハ ¥893,970,000 10.5% 43.5% 13 122頭(35)
13 シルバーステート ¥748,055,000 9.2% 17.2% 12 191頭(12)
14 スクリーンヒーロー ¥737,730,000 8.6% 39.3% 22 110頭(41)
15 リオンディーズ ¥686,650,000 7.8% 46.4% 14 161頭(21)
16 シニスターミニスター ¥652,480,000 13.9% 100.0% 20 164頭(19)
17 イスラボニータ ¥651,320,000 9.2% 35.5% 16 175頭(15)
18 ヘニーヒューズ ¥623,620,000 10.2% 94.3% 22 110頭(41)
19 ミッキーアイル ¥608,780,000 8.3% 52.4% 15 197頭(11)
20 ルーラーシップ ¥587,250,000 6.0% 52.0% 18 243頭(4)
21 ザファクター ¥518,800,000 6.8% 70.8% 23 164頭(19)
22 アメリカンペイトリオット ¥514,790,000 8.6% 50.0% 19 154頭(24)
23 ホッコータルマエ ¥466,140,000 8.7% 100.0% 25 148頭(27)
24 ジャスタウェイ ¥463,860,000 6.7% 36.4% 21 182頭(13)
25 オルフェーヴル ¥437,190,000 4.6% 36.4% 25 136頭(29)

 この世代のサイア―チャンピオン争いはロードカナロアが制しました。ダノンスコーピオンがNHKマイルカップを制し、キングエルメス、サブライムアンセムが重賞を制しました。しかし、種付けが世代ナンバーワンの294頭。新馬・未勝利・条件クラス勝ちを積み上げて、賞金トップに立ちました。

 2位はドゥラメンテ。やはりディープインパクト亡き後のトップに立つ種牡馬だと思います。ただ急逝したのは本当に惜しいところです。スターズオンアースが桜花賞とオークスを制しました。重賞はこの2勝ですが、やはり290頭の種付けは分母を大きくします。

 

3位はキタサンブラック。イクイノックスが天皇賞秋、有馬記念を制し、前期間・11位からの大幅ジャンプアップです。種付け頭数が130頭と、ロードカナロア・ドゥラメンテの半分以下ですので、その活躍が目立ちます。

 4位にやっとディープインパクト。200頭に種付けした世代にしては苦戦しました。しかし、重賞では一番成績を残しましたね。アスクビクターモアが菊花賞、弥生賞を制覇、プラダリアが弥生賞、ジャスティンパレスが神戸新聞杯、キラーアビリティが中日新聞杯を制しました。

 5位はハーツクライが死守。何と言っても、ドウデュースがダービー優勝、マテンロウレオがきさらぎ賞、ダノンベルーガが共同通信杯、ノットゥルノがジャパンダートダービーを制し、活躍が光りました。

ここまで上位5頭、いずれもダートシェア率が30%を切ってきました。秋以降の大きな変革ですね。

 逆に、ダートを走らない種牡馬は、ディープインパクトエピファネイアハービンジャーと目立つようになってきました。

 ダートで活躍する種牡馬としては、ドレフォンが6位、シニスターミニスターが順位を上げて16位、ヘニーヒューズは18位でした。やはりドレフォンがダートで強い傾向は秋以降もそのままでしたが、上級条件ではまだ苦戦しているようです。

 

【2020年産駒との比較】 

 しかし本当に種牡馬戦国時代を考えさせられる結果が、2020年産で起こっています。順位を列記します。カッコ内は2020年産の順位です。

 ①ドゥラメンテ(2位)、②エピファネイア(9位)、③ルーラーシップ(20位)、④ハーツクライ(4位)、⑤ロードカナロア(1位)、⑥モーリス(11位)、⑦ジャスタウェイ(24位)、⑧キズナ(7位)、⑨ハービンジャー(11位)、⑩ヘニーヒューズ(18位)。

 エピファネイアルーラーシップジャスタウェイが順位を爆上げ。(ヘニーヒューズはダートの上級条件戦が無いので毎年この時点ではこれくらいの順位です。)。

 初年度産駒では、⑪マインドユアビスケッツ、⑫リアルスティール。また、非社台から⑱ダノンバラード(18位)。初年度から重賞ウイナーを出し勢いがあります。2023年種付け料100万⇒200万倍増も即万口です。

 また古株、ビッグアーサー(16位)も早期から活躍し、7月の時点では2位につけていました。こちらも重賞ウイナーを輩出し、非社台系では抜群の活躍です。

【まとめ】

 とにかく大きな歴史の転換点になったのが、ディープインパクトの首位陥落・キングカメハメハ種付け頭数制限で大きくランクダウンしたこと。毎年双璧として種牡馬界を牽引してきた2頭のランクダウンは次世代、種牡馬戦国時代を告げる合図となりました。次世代への過渡期ですね。

 今後について。追い打ちをかけて、ハーツクライの種牡馬引退(2020世代が最後)。ドゥラメンテも2021世代がラストクロップになります。

 上位で残っているのはロードカナロアだけ。こうなってくると、否応なく、古参種牡馬・新種牡馬が上位争いを展開します。2022年の2歳戦の動向を見ても、「これは強いぞ!」という確たる種牡馬がいません。キングカメハメハ後継種牡馬はたくさんいるのですが、ディープインパクトの後継はコントレイルに託されている・・・と言ったところでしょうか?

 この後、種牡馬争いがどうなっていくのか、引き続き分析を続けたいと思います。

 

【賞金の目安】

G1:1億~3億、G2:6000万円、G3:4000万円、リステッド:2200万円、3勝クラス特別レース:1840万万円、2勝クラス特別レース:1510万円

条件戦で勝鞍を積むと、ジワジワ順位を上げてきます。2勝クラス特別レースを4勝すれば、G3を勝つより賞金を詰める計算です。

 

 

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