JRAホームページの上記の2歳リーディングサイアーランキングは、集計が12月最終開催時点で終了します。その後のランキングを捕捉していくデータは公表されません。
しかし、私は2022年の1月以降の3歳の重賞レースを見つつ、この2歳ランキングが少し様相を変えてくるのではないか…と、ざっくりとした予感がありました。そこで考えたのが「世代のサイアーランキング」です。期間を区切って、単一世代の賞金データを集計して行けば、この現3歳世代(2019年産)で種牡馬の勢力図が見えてくるのではないか…という考え方です。
ただ、単一世代で集計すると、どうしても母集団が小さくなってしまうという点には注意を払わなければなりません。産駒が多い種牡馬では、データが偏ること(賞金も加算されやすい)も予想されます。
ダービー終了時点のサイアーランキングはコチラ
本論に入る前に、秋華賞・菊花賞の結果を見てみましょう。
秋華賞 | 馬名 | 父名 | 賞金 |
1着 | スタニングローズ | キングカメハメハ | ¥110,000,000- |
2着 | ナミュール | ハービンジャー | ¥44,000,000- |
3着 | スターズオンアース | ドゥラメンテ | ¥28,000,000- |
人気だったスターズオンアース、スタニングローズは行き脚がつかず、最後方からの競馬。好位から抜け出したスタニングローズが、後続の猛追を交わして優勝。キングカメハメハ最終世代のG1馬となりました。4着にはオルフェーヴル産駒のメモリーレゾン、5着にはスクリーンヒーロー産駒のアートハウスが入線。
菊花賞 | 馬名 | 父名 | 賞金 |
1着 | アスクビクターモア | ディープインパクト | ¥150,000,000- |
2着 | ボルドグフーシュ | スクリーンヒーロー | ¥60,000,000- |
3着 | ジャスティンパレス | ディープインパクト | ¥38,000,000- |
1000mの通過が58.7秒と、長距離戦としてはかなりのハイペース。最後は各馬脚が上がりましたが、優勝したのは好位で粘ったディープインパクト産駒のアスクビクターモア。3’02”4と、阪神競馬場の3000mレコードとなりました。追い込んだボルドグフーシュもハナ差届かず。3着にはこちらもディープインパクト産駒、ジャスティンパレスが入りました。
ディープインパクト産駒は、前哨戦でも活躍し、ローズSでサリエラが2着、セントライト記念でアスクビクターモアが2着、神戸新聞杯ではジャスティンパレスが1着と、賞金を加算できたのは、サイアーランキングに大きく影響を与えました。
(集計期間:2021年6月~2022年10月23日)
※獲得総賞金順
※勝率が10%を超える種牡馬は赤字で表示しています(出走頭数ベースではなく、出走回数ベースです)。
※ダートシェア率が30%を超える種牡馬は黄色で着色。ダートシェアの考え方は、過去のコラムをご参照ください。
※種付け頭数の()数字は2019年産駒の種付け頭数ランキングの順位です。
順位 | 種牡馬 | 獲得総賞金 | 勝率 | ダートシェア率 | 前期間までの順位 | 種付け頭数 |
1 | ディープインパクト | ¥1,682,280,000 | 17.8% | 6.4% | 3 | 197頭(9) |
2 | ドゥラメンテ | ¥1,585,400,000 | 10.4% | 42.4% | 1 | 290頭(2) |
3 | ロードカナロア | ¥1,499,480,000 | 11.4% | 31.4% | 2 | 294頭(1) |
4 | ドレフォン | ¥1,197,740,000 | 11.5% | 80.0% | 5 | 207頭(7) |
5 | ハーツクライ | ¥1,146,200,000 | 11.4% | 29.3% | 4 | 174頭(14) |
6 | エピファネイア | ¥1,025,100,000 | 8.7% | 15.6% | 6 | 220頭(5) |
7 | キズナ | ¥968,500,000 | 11.4% | 41.4% | 9 | 152頭(25) |
8 | モーリス | ¥879,360,000 | 9.7% | 36.8% | 11 | 245頭(3) |
9 | ダイワメジャー | ¥853,620,000 | 11.7% | 31.4% | 8 | 136頭(29) |
10 | ハービンジャー | ¥869,970,000 | 7.6% | 10.2% | 7 | 212頭(6) |
11 | キタサンブラック | ¥779,120,000 | 12.5% | 23.5% | 10 | 130頭(31) |
12 | キングカメハメハ | ¥745,720,000- | 12.3% | 36.3% | 13 | 122頭(35) |
13 | シルバーステート | ¥676,680,000 | 8.5% | 17.9% | 12 | 191頭(12) |
14 | リオンディーズ | ¥528,480,000 | 9.0% | 50.0% | 14 | 161頭(21) |
15 | ミッキーアイル | ¥574,530,000 | 7.8% | 46.4% | 15 | 159頭(23) |
16 | ヘニーヒューズ | ¥557,860,000 | 10.1% | 95.7% | 17 | 197頭(11) |
17 | イスラボニータ | ¥549,800,000 | 9.7% | 38.6% | 16 | 175頭(15) |
18 | スクリーンヒーロー | ¥545,560,000 | 8.9% | 30.8% | 22 | 110頭(41) |
19 | ルーラーシップ | ¥540,110,000 | 5.3% | 56.3% | 18 | 243頭(4) |
20 | シニスターミニスター | ¥539,510,000 | 14.8% | 100.0% | 20 | 164頭(19) |
21 | アメリカンペイトリオット | ¥476,300,000 | 8.7% | 54.5% | 19 | 154頭(24) |
22 | ザファクター | ¥453,100,000 | 7.4% | 75.7% | 23 | 166頭(18) |
23 | ジャスタウェイ | ¥429,760,000 | 6.9% | 40.6% | 圏外 | 148頭(27) |
24 | ホッコータルマエ | ¥389,300,000 | 9.3% | 100.0% | 25 | 182頭(13) |
25 | オルフェーヴル | ¥349,800,000 | 6.3% | 28.6% | 圏外 | 136頭(29) |
首位はディープインパクトが返り咲きました。9月に入ってからのトライアル・クラシックでの活躍の影響が大きく、事実上ラストクロップの世代で、トップに立ちました。2位のドゥラメンテ、3位のロードカナロアはその勢いをキープしています。ドゥラメンテはダートシェア率を前期間からさらに上げました。ここが勝利数を積み上げれた要因になっていると思います。
4位にドレフォンが入りました。ダービー以降、23勝を挙げていますが、22勝はダート戦での勝利。タイセイドレフォンがレパードSで2着に入り、デシエルトがリステッド競争・グリーンチャンネルカップを制しました。特筆すべきは、牝馬がダート戦で強い事。23勝中、17勝は牝馬が挙げたものです。各種牡馬において、ダート戦では圧倒的に牡馬に勝鞍が集中するものですが、ドレフォンは牝馬も強いです。やはりドレフォンはダートで活躍する産駒を量産する種牡馬となり、今後もこの傾向は続くと考えられます。
5位のハーツクライはダービー以降、急減速です。ダービーまでは獲得賞金も上位3種牡馬に肉薄していたのですが、ダービー以降の賞金を大きく積めませんでした。ノットゥルノがジャパンダートダービーを制しましたが、それを踏まえても、順位を下げているのが現状です。
以下、気になる種牡馬を挙げます。
エピファネイア、モーリスは勝率が低いです。産駒数が多い分、上位に食い込んで来れています。2019年度産駒は成績がイマイチですね。2020年度産駒は好調なので、この世代は不毛の世代であると考えられます。
キズナがランクを徐々にランクを上げてきました。芝の条件戦で着実に勝鞍を積んできています。種付け頭数が152頭と、他の上位種牡馬と比べて少ないです。単純計算で、もしこの世代で200頭に種付けしていたとすると、4位にランクインする賞金を積んでいた計算になります。同様にキタサンブラックも産駒は少なく、200頭に種付けしていれば、5位にランクインしていた計算になります。しかし種付け統計を見ても、両馬とも2020年産以降、種付け頭数が少ない現状に変わりはないですね。残念なところです。
ルーラーシップはこの世代絶不調。243頭に種付けしているにもかかわらず、19位と低迷。2020年産駒は成績回復の兆しがあるので、推移を見守りたいです。
下位から特筆すべきは、シニスターミニスターの勝率の高さ。勝率ではディープインパクトに次ぐ、2位にランクインします。19歳と高齢のため、産駒数は極端に増えないでしょう。後継種牡馬となるインカンテーションには頑張ってもらいたいですね。
最後にダートシェア率が低い、ダート替わりが苦手(言葉は悪いですがダートで潰しが効かない)種牡馬を上げておきます。ディープインパクト(6.4%)、ハービンジャー(10.2%)は覚えておきたいです。ダービー終了時点では、シルバーステート、ルーラーシップも名前を挙げていましたが、この夏にダートでの勝鞍を積んできました。
この世代のリーディングサイアーランキングの集計は、年末まで続けたいと考えています。これから古馬混合G1が目白押し。天皇賞秋、エリザベス女王杯、マイルチャンピオンシップ、チャンピオンズカップに出馬の意向を示している3歳馬がいます。また、機運が向けば、ジャパンカップ、有馬記念にも3歳馬が出てくるでしょう。G2・G3の重賞もありますし、2勝・3勝クラスに滞在している3歳馬も多いです。首位のディープインパクトと2位のドゥラメンテも約1億円差。まだまだ上位争いも予断を許さないと考えています。
【賞金の目安】
G1:1億~3億、G2:6000万円、G3:4000万円、リステッド:2200万円、3勝クラス特別レース:1840万万円、2勝クラス特別レース:1510万円
条件戦で勝鞍を積むと、ジワジワ順位を上げてきます。2勝クラス特別レースを4勝すれば、G3を勝つより賞金を詰める計算です。