今年もPOG(2020年産)のシーズンがやってきました。キングカメハメハ、ディープインパクト(数頭いますが)、などの有力種牡馬が不在の中、指名馬選びに苦戦しているのではないでしょうか。そこで、この世代の指名馬を選ぶ参考にするため、各種データを調べてみました。

(1)生産種付け統計

(2)2021年セレクトセールについて

(3)有力馬主について

(4)クラブ募集馬について

 

(1)種付け統計

 2018年、アーモンドアイが牝馬3冠を達成。皐月賞はエポカドーロ(オルフェーヴル)、ダービーはワグネリアン(ディープインパクト)、菊花賞はフィエールマン(ディープインパクト)が勝利。古馬ではスワーヴリチャード(ハーツクライ)、レイデオロ(ロードカナロア)、リスグラシュー(ハーツクライ)等が活躍。Frankel産駒のモズアスコットが安田記念を制し、アドマイヤムーン産駒のファインニードルが短距離G1を席巻しました。

 その年の活躍馬を見て、2019年に種付けされたのが、新年度POG産駒(2020年産)です。

※印は主に中小牧場での種付けが中心で、大手牧場での種付けは少ないor皆無な種牡馬。

 

【上位30頭】

種牡馬名 種付け頭数 前年比 種付け料 前年比
ロードカナロア 245 -49 1500万円 +700万円
ルーラーシップ 225 +18 400万円 ステイ
エピファネイア 224 +4 250万円 ステイ
ハービンジャー 217 +5 600万円 +250万円
ジャスタウェイ 214 +66 400万円 +100万円
モーリス 212 -33 400万円 ステイ
※ホッコータルマエ 208 +26 80万円 ステイ
サトノクラウン 207 NEW 100万円
ドレフォン 204 -3 300万円 ステイ
ドゥラメンテ 184 -106 600万円 +200万円
ハーツクライ 180 +6 800万円 ステイ
リアルスティール 177 NEW 200万円
※フリオーソ 175 +44 50万円 ステイ
※アジアエクスプレス 172 -33 120万円 +60万円
ヘニーヒューズ 170 -22 400万円 +50万円
キズナ 164 +12 350万円 ステイ
コパノリッキー 159 -35 115万円 +35万円
※ベストウォリアー 158 NEW 30万円
シルバーステート 157 -34 100万円 +20万円
キンシャサノキセキ 156 +28 200万円 -50万円
ダンカーク 156 +49 120万円 ステイ
ダイワメジャー 155 +19 500万円 ステイ
ビックアーサー 155 -9 100万円 ステイ
マインドユアビスケッツ 155 NEW 200万円 ステイ
リオンディーズ 153 -8 200万円 +50万円
デクラレーションオブウォー 152 NEW 230万円
サトノダイヤモンド 144 NEW 300万円
ディスクリートキャット 143 -25 150万円 ステイ
イスラボニータ 142 -28 150万円 ステイ
ミッキーアイル 142 +28 150万円 ステイ

 

・ロードカナロア・・・ホープフルSでサートゥルナーリアが優勝。アーモンドアイが3冠達成。古馬でもステルヴィオ、ダノンスマッシュ等、活躍馬多数。しかし種付け料ほぼ倍増につき、種付け頭数は49頭減しました。逆に考えれば、それでも種付けしてくる生産者は、それなりに脈ありなのでしょう。質の高い繁殖牝馬が配合されている可能性が高い事が考えられます。

・ルーラーシップ…キセキがJCでアーモンドアイの2着。ダンビュライト、メールドグラース、ディアンドル、ワンダフルタウンと各世代で堅実に活躍馬を出しており、2013年の種牡馬デビュー以降、200頭以上の種付けをキープしています。

・エピファネイア・・・当時それほど種付け料が高くないため、デビュー世代を待たずに、200頭台の種付けをキープしています。

・ハービンジャー・・・ブラストワンピースの有馬記念優勝を受けて大幅アップ。ペルシアンナイト、ディアドラ、モズカッチャンなど活躍馬が多い世代。種付け料が上がっても、種付け頭数は増加しています。

・ジャスタウェイ・・・ヴェロックスがクラシック3レースとも好走した影響から、種付け料がアップしましたが、種付け頭数は前年比プラス66頭。期待の高さが伺えます。この種付けシーズン後に、社台スタリオン・ステーションからブリーダーズ・スタリオン・ステーションに移籍します。

・ドゥラメンテ・・・デビュー世代を待たずに、種付け料アップしました。その影響か、種付け頭数が前年比-106頭と大幅に減少しました。その後早逝したため、2023年産世代がラストクロップになります。

・モーリス・・・期待値の大きさからか、200頭台の種付けをキープしました。産駒は未出走の世代です。

 

【番外編】

スクリーンヒーロー 118 +8 600万円 ステイ
キタサンブラック 110 -20 400万円 -100万円
ゴールドシップ 107 +14 250万円 -50万円
オルフェーヴル 52 -84 400万円 -100万円

・スクリーンヒーロー・・・高齢のため種付けの制限がかかっています。

・オルフェーヴル・・・種付け頭数が大幅減。ネットでは初年度の勝ち上がり率が悪かったとのコメントがほとんど。ただ初年度からエポカドーロ、ラッキーライラックの活躍もありました。オルフェーヴル自身に健康的なトラブルがあって、種付け数が控えられた可能性もあります。ちなみにオルフェーヴルはシンジケートが組まれていません。

・キタサンブラック・・・産駒のデビューを待たずに、種付け料・種付け頭数とも減額。期待値が低い可能性もあります。

 

(2)2021年セレクトセールについて(特に記載が無い場合は税別金額)

 まずはセレクトセール2021で1億円を超えた1歳馬リストです。

 ※黄色字はセレクトセール馬主デビュー

金額 母馬名 馬名 購買者
3億円 ゴーマギー ディープインパクト オープンファイア 長谷川 祐司
3億円 ファイネストシティ ロードカナロア リプレゼント 藤田 晋
2億6000万円 ギエム シルバーステート ショウナンバシット 国本 哲秀
2億4000万円 エピックラヴ ロードカナロア   ダノックス
2億2000万円 クイーンズリング ロードカナロア シャザーン 金子真人HD
2億円 ヴィンテージローズ エピファネイア チャンスザローゼス 藤田 晋
2億円 ジペッサ Justify ユティタム 金子真人HD
2億円 スイープトウショウ ディープインパクト スイープアワーズ 池田 豊治
1億9000万円 アイムユアーズⅡ Saxon Warrior アドマイヤイル 近藤 旬子 
1億6500万円 シーウィルレイン ハーツクライ   ダノックス
1億6500万円 メジロツボネ ハーツクライ エゾダイモン 藤田 晋
1億6000万円 ホットチャチャ ロードカナロア リアリーホット 長谷川 祐司
1億6000万円 サンタフェチーフ リアルスティール フェイト 藤田 晋
1億6000万円 ラッドルチェンド ダイワメジャー ショウナンハクウン 国本 哲秀
1億6000万円 カラライナ ハーツクライ   サトミHC
1億4000万円 ライツェント ルーラーシップ フリームファクシ 金子真人HD
1億3500万円 オーマイベイビー バゴ   ダノックス
1億3500万円 シルヴァ―スカヤ ハーツクライ フォントブルー スエヒロレーシング
1億2000万円 ワッツダチャンセズ ディープインパクト シップポップアスク 廣崎利洋HD
1億2000万円 イルーシヴウェーヴ ハーツクライ レッドマジック 藤田 晋
1億1500万円 パシオンルージュ サトノアラジン エコロジョイアー 原村 正紀
1億1000万円 サンデースマイルⅡ ハービンジャー プリスキー 金子真人HD
1億1000万円 ローザフェリーチェ エピファネイア ヤングローゼス 藤田 晋
1億500万円 ベルアリュールⅡ ロードカナロア ディンディンドン 藤田 晋
1億500万円 チェリーコレクト サトノダイヤモンド   サトミHC
1億円 マルケッサ ドゥラメンテ ドゥラエレーデ Charles-de-Gaulle
1億円 プレシャライジング キズナ ジャクソンルーツ ムサシノターフ

 2021年セレクトセールはキングカメハメハ産駒・ディープインパクト産駒不在であり、かなりの売り上げ減少が見込まれていました。しかし、いざ蓋を開けてみると当歳セッション・1歳馬セッションを合わせて、史上最高額(合計225億5600万円)を記録しました。現在のコロナ禍、経済の停滞を考えると、セールは異例の大活況だと言えます。要因は3つあります。

①セレクトセールにおいて、購買者登録が前年比で1割増えて、750人になりました。購買者層広がったという訳です。

②「ウマ娘 プリティーダービー」を運営する、馬主歴2年目、サイバーエージェント代表の藤田晋氏がセレクトセールに初登場しました。そこで高額馬を大量買い付け。18頭・総額23億6200万円の競走馬を購入しました。総売り上げの10.5%を藤田晋氏が買い占めた計算になります。

③藤田晋氏の登場により、全体的なセリ価格が高騰しました。①に記した購買者が増加した事、古参有力馬主も大枚をはたかないと、藤田晋氏に競り負けてしまう事、等により「1頭でも多く買いたい」とい購買意識から全体的なセリ価格の高騰につながりました。

 この事により、競走馬を買いそびれた馬主さんが増え、その後行われた、北海道市場セレクションセール2021では、藤田晋氏が参加しなかったにもかかわらず、史上最高の36億5070万円の売り上げを記録しました。キングカメハメハ・ディープインパクト産駒がいない市場で、次にどの種牡馬の産駒を買うのか、当分はどの種牡馬が好成績を収めるのか、個人馬主さんは多方面に手を伸ばさなければいけなさそうです。

 1億円を超えた落札馬の中でも、エピファネイア、ロードカナロア、キズナ、レイデオロ(当歳)など上位は拮抗していますし、ジャスティファイ、フランケル、サクソンウォリアーなど海外供用馬も含めて、いろいろな種牡馬の子が1億円以上で取引されました。まさに種牡馬戦国時代ですね。

 

(3)有力馬主の(2021年)動向

 藤田晋さんは2021年に馬主デビューしました。初年度は国内産は1頭のみ。千葉サラブレッドセールでも4億7010万円でドーブネ(社台F産)を落札。他に4頭所有していますが、全て森厩舎所属のマル外産駒。うち3頭が現段階(5/1)で2勝以上です。NZTを制しNHKマイルCに出走するジャングロも含まれます。想像の域を出ないのですが、森氏が海外セールを下見し、藤田晋氏が購買したものだと思われます。森厩舎のマル外預託馬は2019年産駒で急増。なんと17頭の海外セールス馬を預かっています。2020年度産駒もこの森-藤田ラインのマル外馬は現時点で4頭が競走馬登録をしてます。

 海外にも進出しているキーファーズですが、ドゥデュース(朝日杯FS:1着、弥生賞:2着、皐月賞:3着、ノーザンファーム産)でG1初制覇を果たしました。ディープ産駒・マイシンフォニー(FR:4着、フローラS:4着、ノーザンファーム産)と惜しいところであと一歩。ロン(野路菊S:1着、三嶋牧場産)もクラシック前に一頓挫ありました。2020年度産駒は、現在キーファーズ名義では所有ゼロ。松島さんのご息女・松島悠衣さんが代表を務める愛馬会、インゼルレーシングが19頭を所有しています。

 2019年から馬主デビューを果たした三木正浩さん。現3歳世代は絶好調です。ジャスティンロック(京都2歳S:優勝、弥生賞:3着、酒井牧場産)、ジャスティンパレス(ホープフルS:2着、ノーザンF産)、エリカヴィータ(フローラS:優勝、ノーザンF産)など、クラシック路線に乗っている馬を複数持っています。ジャスティンロックは北海道セレクションセールでの購入場で、価格は2,530万円。引きの強さを感じますね。

 古豪、寺田千代乃さんも絶好調。マテンロウオリオン(シンザン記念:優勝、NZT:2着、ムラカミファーム産)、マテンロウレオ(きさらぎ賞:優勝、猪野毛牧場産)。2頭ともセール取引馬ではありません。両馬をはじめ、庭先取引馬は栗東・昆厩舎に預託する傾向があるようです。

 こちらも古豪、ダノックス。出世頭のダノスコーピオン(萩S:優勝、ケイアイファーム産)でセール非上場馬。ダノンベルーガ(共同通信杯:優勝、皐月賞:4着、ノーザンファーム産)はセレクトセール購入馬で、1億7,280万円の高値がついた馬。ケイアイファームの繁殖牝馬であるインディアナギャル(仔にダノンプレミア)2020は手放したようで、ロードホースクラブの募集馬となっています。

 毎年必ず好成績を残す、金子真人HDは、リューベック(ノーザンF産)が若駒S優勝。母クロウキャニオンを所有しており、その仔ダンテスビュー(ノーザンF産)はきさらぎ賞:2着。ママコチャ(母ブチコ)もノーザンF預託生産で、ファンタジーS:3着、エルフィンS:2着。セレクトセールで2,105円で落札した、ノットゥルノ(下河辺牧場産)はダート路線、伏竜S:2着。クラシックでの活躍は見込めなさそうですが、これから巻き返してくる事は間違いないでしょう。

 スプリングS:5着、アーリントンC:5着のディオ(下河辺牧場産)を所有する石川達絵さん。アップデート(白井牧場産)、ハイエンド(下河辺牧場産)が未勝利を勝ち上がっており、1勝クラスで頑張っています。この世代はやや不作気味なのかもしれません。

 タイセイディバイン(下河辺牧場産)がファルコンS:2着、アーリントンC:2着という成績の田中成奉さん、黒竹賞を勝ったホウオウルーレット(岡田スタッド産)が出世頭の小笹芳央さんもこれから・・・といった所でしょうか。

 以下、参考までに、2021年セレクトセールにおける1歳馬購入額ランキングです。

順位 購買者 購入金額 購入頭数
1 藤田 晋 236,200 18
2 ダノックス 126,000 8
3 金子真人HD 105,700 9
4 小笹芳央 93,400 9
5 三木正浩 80,400 10
6 サトミHC 71,700 13
7 国元 哲秀 70,500 4
8 SCライオン 57,800 11
9 DMM.com 54,700 13
10 廣﨑利洋HC 49,700 7
11 野田みづき 46,600 8
12 長谷川 裕司 46,000 2
13 寺田 千代乃 40,500 7
14 雅苑興業 37,200 5
15 近藤旬子 35,500 3
16 ムサシノターフ 26,600 3
17 池田 豊治 26,600 2
18 大野 剛嗣 24,000 4
19 キーファーズ 22,800 3
20 Y’s consignment sala 22,000 1

 

(4)クラブ募集馬について

 現在の中央競馬はクラブ法人所有馬を除いては語れません。確実に重賞、特にG1を狙ってきます。ここでは詳細は割愛しますが、年度ごとの競争馬登録数をまとめます。やはり近年増加傾向にありますね。2歳・3歳重賞はクラブ法人馬を中心に賑わって行くかもしれません。

※デビュー前に競争能力を喪失した馬は除きます。 ※中央競馬登録数です。

クラブ名 2018年産 2019年産 2020年産 代表馬
サンデーR 75 90 90

シャリフヤール

シュネルマイスター

ジオグリフ

社台RH 67 88 88

スターズオンアース

ソーヴァリアント

ステラリア

シルクR 71 84 71

ピクシーナイト

アリーヴォ

イクノイックス

キャロットF 71 97 98

エフフォーリア

オーソクレース

キラーアビリティ

SCラフィアン 32 36 44

ユーバーレーベン

マイネルヴェロシテ

アインゲーブング

G1レーシング 41 57 64

セリフォス

ヴィクティファルス

ヴァリアメンテ

東京サラブレット 36 42 47

レッドジェネシス

レッドベルオーブ

レッドソルダード

ロードホースC 22 34 33

ロードエクレール

ロードマックス

ヴェルトハイム

 

 その他、下河辺牧場の取り組で、「下河辺ウイナーズクラブ」というクラブ法人があります。出資者の条件は、JRAで馬主登録がある人。つまり丸々一頭を所有するのはリスクがあるけれど、みんなで持てばリスクも減り、分配も受けられる。下河辺牧場も収入が得られる。ウインウインな関係を築きたい人向けのクラブ法人ですね。こちらが2022年募集サイトです。興味がある方は是非見て下さい。各馬10口募集です。

 

 

 

 

 以上、2020年世代のPOG指名馬を選択するにあたり、必要な資料をまとめました。正直言って、どの馬、どの馬主さん、どの生産牧場産が活躍するのか、わかりません。

 POGでは通常実績ベースで馬選びを行うものです。しかし、キングカメハメハ・ディープインパクトが居なくなったことで、新勢力の種牡馬の勢力図が見えなくなりました。また新参の馬主さんが高額馬を買い占めたことで、馬主さんの勢力図も不透明になりました。また2021年~2022年、個人馬主さんの所有馬においても、浮上した方・下降した方の明暗が分かれました。そしてクラブ募集馬もどんどん裾野が広がっているようです。

 今年のPOG指名馬選びは難しいです!間違いないく!

 でも、だからこそ、一頭一頭吟味して、選んでいく過程は楽しみがあるような気がします。様々な要素をパズルのように組み立て、推理していく、そういう年になると思います。最初から正解はありません。みなさんの競馬勘がどの要素を選んでいくのか、楽しみにしたいと思います。

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