現3歳世代(2019年産)も桜花賞・皐月賞を終え、オークス・ダービーを見据え、POG大会的にも佳境に入ってきました。どのような種牡馬がこの世代を牽引しているのか、気になる所です。

 JRAは公式ホームページで、全世代合計したリーディングサイアーランキングと、2歳戦に限定したリーディングサイアーランキングを公表しています(下表)。2歳戦の集計期間は、新馬戦開始日~2歳戦年内最終開催日です。

 

 
順位 種牡馬 獲得賞金 勝率
1 ディープインパクト 454,893,000円 43.9%
2 エピファネイア 396,665,000円 23.4%
3 ドゥラメンテ 385,384,000円 24.0%
4 ロードカナロア 373,005,000円 21.2%
5 ドレフォン 349,444,000円 31.1%
6 ハーツクライ 292,487,000円 18.2%
7 ダイワメジャー 286,560,000円 24.6%
8 モーリス 261,281,000円 20.2%
9 シルバーステート 247,688,000円 19.4%
10 キズナ 238,087,000円 35.6%

 

 ディープインパクトが首位を独走し、エピファネイア・ドゥラメンテ・ロードカナロアが肉薄しつつ、それに続くという形です。ドレフォン・シルバーステートが上位食い込む…と言ったトピックスを除いては、POGで狙っていった種牡馬がそれなりのランクに居るのではないでしょうか。

 しかし、JRAホームページの上記の2歳リーディングサイアーランキングは、集計が12月最終開催時点で終了します。その後のランキングを捕捉していくデータは公表されません。

 しかし、私は2022年の1月以降の3歳の重賞レースを見つつ、この2歳ランキングが少し様相を変えてくるのではないか…と、ざっくりとした予感がありました。そこで考えたのが「世代のサイアーランキング」です。期間を区切って、単一世代の賞金データを集計して行けば、この現3歳世代(2019年産)で種牡馬の勢力図が見えてくるのではないか…という考え方です。

 ただ、単一世代で集計すると、どうしても母集団が小さくなってしまうという点には注意を払わなければなりません。産駒が多い種牡馬では、データが偏ること(賞金も加算されやすい)も予想されます。しかし、重賞を勝つ産駒を輩出した種牡馬は上位にランクインする。限られた頭数においては、それはそれで意味のある数値として捉えられるのではないか…と考えました。

 

 そこで現3歳世代(2019年産)の新馬戦開始(2021/6/4)から、クラシックレースが始まる直前、桜花賞前週(2022/4/3)までの期間を単一期間として、総賞金をベースに種牡馬ランキングの集計をしてみました。

※総獲得賞金順

※勝率が10%を超える種牡馬は赤字で表示しています(出走頭数ベースではなく、出走回数ベースです)。

※ダートシェア率が30%を超える種牡馬は黄色で着色。ダートシェアの考え方は、過去のコラムをご参照ください。

※種付け頭数の()数字は2019年産駒の種付け頭数ランキングの順位です。

順位 種牡馬 総獲得賞金 勝率 ダートシェア率 種付け頭数
1 ディープインパクト ¥712,650,000 20.4% 3.8% 197頭(9)
2 ドゥラメンテ ¥701,750,000 10.0% 33.3% 290頭(2)
3 ロードカナロア ¥697,880,000 11.5% 22.6% 294頭(1)
4 ハーツクライ ¥605,450,000 14.4% 21.1% 174頭(14)
5 エピファネイア ¥599,370,000 8.5% 8.8% 220頭(5)
6 ドレフォン ¥578,340,000 13.0% 75.9% 207頭(7)
7 ハービンジャー ¥499,920,000 9.5% 11.8% 212頭(6)
8 ダイワメジャー ¥447,450,000 11.3% 27.6% 136頭(29)
9 モーリス ¥445,130,000 8.8% 29.4% 245頭(3)
10 キズナ ¥378,230,000 9.7% 50.0% 152頭(25)
11 シルバーステート ¥378,230,000 11.4% 15.4% 191頭(12)
12 リオンディーズ ¥337,340,000 9.3% 41.7% 161頭(21)
13 イスラボニータ ¥333,780,000 9.1% 36.0% 175頭(15)
14 キタサンブラック ¥320,250,000 14.1% 21.4% 130頭(31)
15 ヘニーヒューズ ¥294,970,000 10.3% 100.0% 192頭(11)
16 ルーラーシップ ¥294,970,000 5.8% 42.1% 243頭(4)
17 アメリカンペイトリオット ¥274,520,000 7.8% 47.1% 154頭(24)
18 ミッキーアイル ¥272,170,000 8.0% 53.3% 159頭(23)
19 シニスターミニスター ¥267,410,000 16.3% 100.0% 164頭(19)
20 キングカメハメハ ¥252,000,000 10.1% 41.2% 122頭(35)
21 ジャスタウェイ ¥241,180,000 7.2% 31.6% 148頭(27)
22 ザファクター ¥219,610,000 7.2% 70.0% 166頭(18)
23 スクリーンヒーロー ¥203,820,000 8.4% 23.1% 110頭(41)
24 ディスクリートキャット ¥203,170,000 6.4% 100.0% 168頭(17)
25 ホッコータルマエ ¥201,130,000 9.5% 100.0%  182頭(13)

 ※集計期間 2021/6/4~2022/4/3

 上位は見事に拮抗し、ディープインパクト・ドゥラメンテ・ロードカナロアが横一線。また少し総獲得賞金は見劣りしますが、ハーツクライ・エピファネイア・ドレフォンが熾烈な争いを繰り広げています。本当に上位種牡馬は差がないと断言できます。例年のようにディープインパクト一強ではありません。

 ここで上記のようなランキングを形成する大きな要因となっているのは、この世代のディープインパクト産駒の不調です。同産駒は111頭中央競馬に登録がありますが、新馬・未勝利戦を勝ち上がっているのは、わずか46頭。重賞を勝っているのは、コマンドライン(サウジアラビアRC)、キラーアビリティ(ホープフルS)、アスクビクターモア(弥生賞)の3頭のみ。特に牝馬が苦戦を強いられています。ロードカナロアも不調です。これもランキング波乱の要因の一つです。

 種牡馬戦国時代に突入する…と以前のコラムでも述べましたが、今まさにその状況が近づいているのです。今回は敢えて、2022/4/3の段階で集計を区切っています。「2歳戦」→「3歳クラシック直前」→「オークス・ダービーを終えて」→「秋華賞・菊花賞を終えて」と、その推移を見ていきたいと思います。間違いなく、この推移を見守れば、『リーディング種牡馬の歴史が変わる瞬間』を見ることが出来ると確信しています。

 【次回更新の予定】

 桜花賞を勝ったのはドゥラメンテ産駒、2着がシルバーステート産駒。皐月賞を制したのはドレフォン産駒。2着がキタサンブラック産駒。この4種牡馬にドカンと大きな賞金が乗るのですから、まさに上位リーディングは大逆転ですね。ダービーが終わればまたデータを更新しますので、楽しみにお待ちいただければと思います。

 

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